会社からお金を借りる代表的な方法は、勤務先の福利厚生である従業員貸付制度です。総量規制の対象外で金利は年1〜4%前後と低めですが、正社員・勤続年数などの条件があり、退職時は一括返済を求められる点に注意が必要です。
この記事でわかること
- 会社からお金を借りる主な方法と、検討すべき順序(自分の賃金の前倒し→従業員貸付制度→公的支援)
- 従業員貸付制度の仕組み(総量規制の対象外・信用情報に載らない理由、金利・限度額の目安、借り方の流れ)
- 借りる前に確認したい労基法25条の「非常時払い」と給与前払い(借金ではなく、働いた分の賃金を先に受け取る仕組み)
- 勤務先で借りるときの固有のリスク(退職時の一括返済・社内評価・同僚への露見)と、制度がないときの選択肢
結論を先に書きます
「会社からお金を借りられますか」という問いへの答えは、多くの場合は勤務先の従業員貸付制度を使えば可能、というものです。ただしすべての会社にある制度ではなく、正社員・勤続年数などの条件があります。
見落とされがちですが、借りる前にまず「自分がすでに働いた分の賃金を前倒しで受け取れないか」を確認するのが安全です。出産・病気・災害などの非常時には、労働基準法にもとづき賃金の前払いを請求できる仕組みがあります。これは借金ではないため、利息も返済も発生しません。
- 会社からお金を得る方法は、大きく「自分の賃金の前倒し」と「従業員貸付制度(借入)」の2系統に分かれる
- 従業員貸付制度は総量規制の対象外・信用情報に原則載らないが、正社員・勤続年数などの条件があり全社にあるわけではない
- 金利は年1〜4%前後と低め。ただし退職時の一括返済・社内評価・同僚への露見という勤務先ならではのリスクがある
- 制度がない・使えないときは、共済の貸付や公的支援を先に検討する。安易に高金利で借りない
会社以外も含めて「お金を借りる方法」全体を先に把握しておくと、自分に合う手段を選びやすくなります。
会社からお金を借りる方法は主に3系統
会社(勤務先)からお金を用立てる方法は、大きく分けると「自分の賃金を前倒しで受け取る」「会社から借りる(従業員貸付制度)」「勤務先を通じた共済などを使う」の3系統です。まずは全体像を押さえましょう。
大切なのは順序です。利息も返済も発生しない「自分の賃金の前倒し」から先に検討するのが、家計を守るうえで合理的です。
- 自分の賃金を前倒しで受け取る(非常時払い・給与前払い)
- 会社から借りる(従業員貸付制度)
- 共済・公的支援を使う(制度がない・使えないとき)
3つの性質は次のとおりです。借入かどうか、コスト、主な注意点で整理します。
会社まわりの資金調達 3系統の比較
| 方法 | 性質 | コスト | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 非常時払い・給与前払い | 借入ではない(賃金の前倒し) | 原則なし(前払いサービスは手数料) | 受け取れるのは働いた分まで |
| 従業員貸付制度 | 会社からの借入 | 年1〜4%前後の利息 | 条件あり・退職時は一括返済 |
| 共済・公的支援 | 借入または給付 | 低利〜無利子 | 対象要件・審査あり |
「借りる」より前に「もらえる(前倒しできる)」ものがないかを確認する。この順番を意識するだけで、余計な利息を払わずに済むことがあります。
まず確認したい「自分の賃金を前倒しで受け取る」方法
借入を考える前に確認したいのが、すでに働いた分の賃金を前倒しで受け取る方法です。これは借金ではないため、利息も信用情報への影響もありません。
労基法25条の「非常時払い」
意外と知られていませんが、出産・病気・災害などの非常時には、給料日前でも働いた分の賃金を請求できる仕組みが法律で定められています。労働基準法25条の「非常時払い」です。
使用者は、労働者が出産・疾病・災害など省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求したときは、支払期日前であっても既往の労働に対する賃金を支払わなければならない、と定められています(労働基準法25条・厚生労働省・2026年7月閲覧)。省令では、本人や家族の結婚・死亡、やむを得ない事由による1週間以上の帰郷なども対象とされています。
ポイントは、これが「貸付(借金)」ではなく、すでに働いた分の賃金の前倒し払いだという点です。そのため利息はかからず、返済も発生しません。請求できるのは、あくまでその時点までに働いた分までです。手続きは勤務先の総務・経理に相談します。
給与前払い・前借り(会社の制度や前払いサービス)
非常時にあたらない場合でも、会社が独自に「給与前払い制度」や「前払いサービス」を導入していれば、働いた分を早めに受け取れることがあります。近年は専用アプリで申請できる前払いサービスも増えています。
- 社内の前借り交渉:小規模な会社では上司・社長へ、規模が大きければ総務・経理へ相談する
- 給与前払いサービス:勤務先が導入済みなら最短即日で受け取れる。ただし3〜6%程度の利用手数料がかかることが多い
こちらも「働いた分の前倒し」であって借入ではありません。ただし前払いサービスの手数料は、年利に換算すると割高になる場合があります。受け取った月は手取りが減る点も忘れないようにしましょう。
従業員貸付制度とは(仕組みと特徴)
従業員貸付制度とは、会社が従業員にお金を貸し付ける福利厚生の制度です。生活の急な出費を支える目的で設けられており、金融機関の融資とは性質が異なります。
ただし、すべての会社が導入しているわけではありません。制度の有無や条件は、就業規則や社内規程、総務・人事への確認で分かります。
総量規制の対象外で信用情報に載らない理由
従業員貸付制度の大きな特徴は、総量規制の対象外であり、利用が信用情報機関に登録されないことです。理由は、会社が営む貸付が貸金業法上の「貸金業」に該当しないためです。
貸金業者(消費者金融)からの借入には、貸金業法により総量規制(原則として年収の3分の1まで)がかかります。一方、勤務先の従業員貸付は貸金業に該当しないため、この規制の対象外です。また会社は信用情報機関に情報を登録する手段を通常持たないため、利用や返済遅延がいわゆるブラックリストに載ることは原則ありません(貸金業法・金融庁関連解説・2026年7月閲覧)。
つまり、すでに他社での借入がある人や、信用情報に不安がある人でも利用できる可能性がある、という点がメリットです。ただし後述のとおり、社内での信用という別のリスクは残ります。
なお、消費者金融の総量規制やカードローンの基礎はカードローンとはでも整理しています。あわせて確認してください。
金利・限度額の目安
金利は会社ごとに異なりますが、年1〜4%前後と、民間ローンよりかなり低めに設定されるのが一般的です。限度額は勤続年数や役職に応じて決まる例が多くみられます。
従業員貸付制度の限度額・金利の目安(例)
| 区分 | 目安 |
|---|---|
| 勤続1〜3年未満 | 10万円程度 |
| 勤続3〜5年未満 | 20万円程度 |
| 勤続5〜10年未満 | 30万円程度 |
| 勤続10年以上 | 50〜100万円程度 |
| 金利 | 年1.6〜4.0%前後(会社により異なる) |
上記はあくまで一例です。実際の限度額・金利・条件は勤務先の規程によって大きく異なります。無利息や極端に低い利率だと、その差額が給与として課税対象になる場合がある点も、税務上の注意として押さえておきましょう。
従業員貸付制度を利用する条件と審査
従業員貸付制度には、利用できる人の条件と、簡易な社内審査があります。「会社の制度だから誰でも借りられる」わけではない点を理解しておきましょう。
- 雇用形態:正社員に限定する会社が多い(契約・パートは対象外の場合あり)
- 勤続年数:一定期間(例:1年以上)の勤続を求める例がある
- 使途:冠婚葬祭・医療費・引越しなど正当な理由が前提。ギャンブルや投機目的は不可
- 返済能力:給与天引きで無理なく返せる範囲かを確認される
審査では信用情報の照会は行われないものの、在籍状況・勤続・給与水準・貸付理由などが社内で確認されます。消費者金融の審査に比べれば通りやすい一方、借入理由を勤務先に伝える必要があるのは民間ローンとの大きな違いです。
給与天引きで返済する場合は、労働基準法にもとづき労使協定の締結や本人の同意が前提になります。会社が一方的に給与から差し引くことはできません。
従業員貸付制度の借り方(手続きの流れ)
実際の借り方は会社ごとに異なりますが、大まかな流れは共通しています。ここでは一般的なステップを整理します。
- 制度の有無と条件を確認する
- 必要書類をそろえて申請する
- 社内審査・承認を受ける
- 入金を受け、給与天引きで返済する
- 手順1:確認:就業規則や社内規程、総務・人事に制度の有無・限度額・金利・使途条件を確認する
- 手順2:申請:金銭借用証書のほか、借入額・使途・返済計画、必要に応じて連帯保証人の情報を記載して提出する
- 手順3:審査・承認:勤続・給与・使途をもとに社内で審査・決裁される
- 手順4:受取と返済:指定口座へ入金され、毎月の給与やボーナスから天引きで返済する
申請書類や連帯保証人の要否は会社によって差があります。まずは総務・人事に相談し、自社の規程を正確に確認することが第一歩です。
給与前払い・従業員貸付制度・消費者金融の違い
「会社から借りる」と一口に言っても、給与前払いと従業員貸付制度はまったく別のものです。民間の消費者金融も含めて、性質の違いを整理しておきましょう。
3つの手段の違い早見表
| 項目 | 給与前払い | 従業員貸付制度 | 消費者金融 |
|---|---|---|---|
| 性質 | 賃金の前倒し | 会社からの借入 | 貸金業者からの借入 |
| 上限 | 働いた分まで | 規程による(例10〜100万円) | 総量規制(年収の3分の1)の範囲 |
| コスト | 原則なし(サービスは手数料) | 年1〜4%前後 | 年3〜18%前後 |
| 信用情報 | 影響なし | 原則載らない | 登録・照会される |
| 審査 | 原則なし | 簡易な社内審査 | 与信審査あり |
給与前払いは「もらう(前倒し)」、従業員貸付制度は「会社から借りる」、消費者金融は「業者から借りる」。コストと信用情報への影響は右にいくほど重くなる、という関係で覚えると整理しやすくなります。
キャッシングやカードローンなど民間の借入の違いはお金を借りる方法の種類と選び方でくわしく整理しています。
会社からお金を借りるときの注意点・デメリット
条件が良い一方で、勤務先から借りることには固有のリスクがあります。焦って申し込む前に、次の点を必ず確認してください。
- 退職時の一括返済:退職・転職の際に残高の一括返済を求められることがある。転職を考えているなら特に慎重に
- 社内評価への影響:返済が滞ると社内での信用を失い、人事評価や昇進に影響する可能性がある
- 同僚への露見:手続きに関わる総務・経理を通じて、借入の事実が知られる可能性がある
- 使途と就業規則:使途制限があり、返済遅延が就業規則上の問題につながる場合もある
とくに退職時の一括返済は見落とされがちです。低金利で借りられても、退職や会社の都合で状況が変われば、まとまった金額を一度に返す必要が生じます。「会社との関係」と「お金」が結びつくこと自体のリスクを理解したうえで判断しましょう。
借入理由を会社に伝えたくない、勤務先との関係にお金を絡めたくない、という場合は、後述の共済や公的支援、あるいは民間ローンを冷静に比較するほうが向いています。
制度が使えない・勤務先にないときの選択肢
従業員貸付制度がない会社も多く、条件を満たさず利用できないこともあります。その場合も、いきなり高金利で借りる前に検討したい選択肢があります。
共済の貸付制度(公務員・自営業など)
勤め先の種類によっては、共済の貸付制度を使える場合があります。公務員は共済組合の貸付、自営業や小規模事業者は小規模企業共済の契約者貸付などが代表例です。
- 共済組合の貸付(公務員など):生活資金や住宅・医療などの使途に応じ、比較的低利で借りられる。返済は給与控除が中心
- 小規模企業共済の契約者貸付:掛金の範囲内で、事業資金などを低利で借りられる仕組み
いずれも民間ローンより低利なことが多い一方、掛金の納付状況や加入期間などの条件があります。利用可否は各共済の最新の案内で確認してください。
公的支援制度・相談窓口
生活費そのものに困っているなら、社会福祉協議会の生活福祉資金貸付や、自治体の生活困窮者向け相談窓口を先に検討しましょう。無利子・低利の貸付や、状況によっては返済不要の給付・相談支援が用意されています。
公的支援の全体像と申込の流れは、お金がないとき頼れる公的支援制度で整理しています。「借りる前にまず相談」が、選べる選択肢を最も多く残す方法です。
どうしても民間で借りる場合
前倒し・従業員貸付・共済・公的支援のいずれも使えず、それでも資金が必要なときは、民間の借入を検討することになります。その場合も、金利・返済総額・無理のない返済計画を必ず確認し、条件を横並びで比較してから決めましょう。
民間で借りる可能性があるなら、金利・無利息期間・限度額などの条件を横並びで確認し、無理のない範囲かを見極めるのが安全です。
よくある質問
会社からお金を借りることについて、よく寄せられる質問を中立に整理します。
Q1:会社からお金を借りることはできますか?
多くの場合、勤務先に従業員貸付制度があれば借りられます。これは会社が従業員にお金を貸す福利厚生の制度で、金利は年1〜4%前後と低めです。ただしすべての会社にあるわけではなく、正社員・勤続年数などの条件があります。まずは就業規則や総務・人事に制度の有無を確認してください。
Q2:従業員貸付制度は信用情報に影響しますか?
原則として影響しません。会社の貸付は貸金業法上の「貸金業」に該当せず、会社は信用情報機関に情報を登録する手段を通常持たないためです。利用や返済遅延がいわゆるブラックリストに載ることは原則なく、総量規制の対象外でもあります。ただし、返済が滞ると社内での信用には影響する点に注意が必要です。
Q3:給料の前借りと従業員貸付制度は同じですか?
別のものです。給料の前借り(給与前払い)は、すでに働いた分の賃金を前倒しで受け取るもので、借金ではなく利息もかかりません。一方、従業員貸付制度は会社からお金を借りる制度で、利息と返済が発生します。まずは前借り(前倒し)で足りないかを確認し、足りない場合に貸付制度を検討するのが安全な順序です。
Q4:非常時払いとは何ですか?
労働基準法25条にもとづく仕組みで、出産・病気・災害などの非常の場合には、給料日前でもすでに働いた分の賃金を請求できるものです。これは貸付(借金)ではなく賃金の前倒し払いなので、利息も返済も発生しません。省令では本人・家族の結婚や死亡、やむを得ない帰郷なども対象とされています。手続きは勤務先の総務・経理に相談します。
Q5:退職するときはどうなりますか?
従業員貸付制度で借入残高が残っている場合、退職時に一括返済を求められることがあります。低金利で借りられても、退職・転職で状況が変わると、まとまった金額を一度に返す必要が生じる点はリスクです。近く転職を考えているなら、借入前に返済条件(退職時の扱い)を必ず確認してください。
Q6:勤務先に貸付制度がないときはどうすればいいですか?
まずは給与前払いや非常時払いで、働いた分を前倒しできないかを確認します。公務員は共済組合の貸付、自営業は小規模企業共済の契約者貸付が使える場合があります。生活費に困っているなら、社会福祉協議会の生活福祉資金貸付や自治体の相談窓口を先に検討しましょう。安易に高金利で借りず、条件を比較してから判断するのが安全です。
まとめ:会社で借りる前に「順序」を意識する
会社からお金を借りる方法について、最後に整理します。
- まず自分の賃金の前倒し(非常時払い・給与前払い)を確認する。借金ではなく利息も返済もない
- 従業員貸付制度は総量規制の対象外・信用情報に原則載らず低金利。ただし全社にあるわけではなく条件がある
- 勤務先で借りるには退職時の一括返済・社内評価・同僚への露見という固有のリスクがある
- 制度がないときは共済・公的支援を先に検討し、民間ローンは条件を比較してから慎重に選ぶ
会社からお金を用立てる方法は一つではありません。だからこそ、「借りる」より先に「前倒しできる賃金や、返さずに済む支援はないか」を確認してください。順序を意識するだけで、余計な利息やリスクを避けられます。
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※本記事は2026年7月時点の公開情報をもとにした整理です。借入は無理のない範囲で行ってください。従業員貸付制度・給与前払い・非常時払い・共済の貸付・公的支援制度の有無や条件・限度額・金利・申込方法は、各社・各制度・各自治体の判断や申込者の状況により異なり、変更される場合があります。条件は勤務先の規程・各窓口および最新情報を必ずご確認ください。生活や返済にお困りの場合は、お住まいの社会福祉協議会・自立相談支援機関・消費者ホットライン188・法テラス等にご相談ください。労働に関する個別の相談は労働基準監督署へ、個別の債務整理・法的判断は弁護士・司法書士など有資格者にご相談ください。
